森慎二さん、8年前に望んだ二つのこと。
森慎二・西武投手コーチに教えられたこと
少年野球を見て「思いっきり投げているなあいいなあと思った」。寝ている間は肩が外れないようにタオルケットで固定をしていたが「ずれていたからかけ直そうとしたらまた外れかけた」。日常生活では「頭も洗えないし、歯も磨けない」……。怪我から7ヵ月後の急速は「100キロ(笑)」。1月にはメジャー契約を解除され、そして6月の解雇。
取材から再び3年の時を経た2012年、森さんはBCリーグの国際交流戦でマウンドに上がった。このときすでに選手引退を発表し、石川ミリオンスターズの監督になっていたが、このマウンドをきっかけに翌2013年に「監督兼投手」として復帰している。
取材時に「望むことはふたつ」と言い、そのひとつに「思いっきり投げること」と話していた森さんは、2013シーズンは6試合5回1/3を投げ、防御率は6点台も三振を6個奪った。2014年には14試合に登板し14回2/3、防御率は2.63。
「思いっきり投げる」ことはできなかったかもしれない。往年のスピードはなく、長かった髪には白いものが混ざり始めていた。ただ、ピッチング時のあの豪快なフォームだけは変わらなかった。
(ちなみに監督としての実績は5シーズンで4回、リーグチャンピオンシップに出場し3回総合優勝、四国ILと行われるグランドチャンピオンシップも2度制している)
稚拙な発想から始まった取材。教えられたことは「諦めないことは苦しいだけではない」ということだ。苦しいこともある、きついこともある。それでも、自分が望んだことに、暗い顔で立ち向かっては何も実現できないだろう。
インタビューでの最後の一言が思い出される。望んだふたつのことのもうひとつだ。
「メジャーで1球投げること。フリオ・フランコみたいに50歳までやった人間がいる。まだ16年ありますからね。メジャーで1球、投げに行きます」
インタビューから6年後。森さんが西武のコーチに就任し、変わりに石川ミリオンスターズの監督に就任したのはフリオ・フランコ氏だった。
まだまだ森さんのユニフォーム姿が見たかった。ご冥福をお祈りいたします。